「忘×」のための取り組み

 

 

私は、「視聴者さんがその作品のテーマを忘れたら自分の負け」だと思いながら、講義します。

 

そのために、脳科学の最新の知見に基づく復習方法と、『肉付け要約≒朗読』をお話することで、視聴者にとって一生モノの記憶とすることを目標にしています。

全ての筆者が考えているかどうかは定かではありませんが、非常に素朴な話で、文章量が多ければ多いほど、ページ数が多ければ多いほど、その作品は読み終わった後に忘れにくい、と経験則上確信しています。恐らく1000ページを超えるような作品を書いていらっしゃる作者は、「絶対に自分の作品を忘れないで!」という想いを込めて執筆されているのではないかと思います。

もっとも、これは諸刃の剣で、ページ数が多いほど本が分厚くなってしまい、読者が作品を最後まで読み切れなかったり、あるいはそもそも、その作品を手に取ってくださらない人が増えるというリスクも伴います。

 

長編小説というのは最後まで読み切らないと、作品のテーマを確定することができません。しかも、テーマを抽出するには、単純ながらも面倒な解釈技術を持っていなければいけません。

そこで、『ネタバレ先行要約』で先にテーマをお話してしまおうと思いました。そして、最新の脳科学に基づいた勉強をしていただくことによって、分厚い古典のテーマを吸収できる機会を視聴者さんに提供しようと思います。また、作品を入手できないなど、何らかの事情で読破が困難な方のために、『肉付け要約≒朗読』と『読書会』で読者の脳にその作品のテーマを焼き付けてやろうと考えています。

 

別に主人公の名前を忘れたっていいし、作品を読み切っても印象に残る文章がまったく無くても構わない。けど、その作品のテーマだけは忘れないで欲しい――結局、各々の作品のテーマを忘れないことこそが、古典の教養を獲得することであり、視聴者さんにとって一番のメリットになるのではないか、と思っています。そして、その古典のテーマを「視聴者さんが忘れないために」、様々な工夫を凝らしていきます。

 

このように、視聴者さんの「一生モノの記憶」となることを理想としていますが、それが達成できるかはわかりません。というのも、こういうことは、時間や労力や被験者の人数などを考えると、科学的に検証することが困難な領域ですから。なので、①『文章量が多ければ多いほど、その作品は忘れ辛くなる』ということも、②『一つのテーマを解釈して抽出すれば、ずっと覚えていられる』というのもすべて経験則です(①は多くの人に頷いていただけると思いますが、②の理屈は、基礎講座で詳しく説明するとはいえ、その説明がなければなかなかわからないでしょうし)。

 

それでも、古典が、時代を超えても場所を超えても淘汰されることなく、各々の時代の大衆を魅了してきたという実績を基礎にお話しできます。どんなに過小評価しても、古典のこの部分の価値は消えようがないと思いますので。